– 斜めがけストラップを量産化
クラシック一眼レフカメラに似合うように作った斜めがけストラップがなかなかの出来だったので、大量に作れるようにしていく事にしました。しかも量産しつつ1本ずつ長さを希望に合わせて変更出来るようにして、オリジナルの1本でありながら作り方は簡略化する方向で進めていきます。実際に使用した型紙から完成までの流れを書いていきます。
– 改良点
前回の斜めがけストラップは身長や使うカメラに合わせて長さと幅を決めていたので、調整用の金具などの必要がなく既に軽量に作られていました。ただ、ストラップのリングが入る側の折り返しと縫い目の部分が若干短く、それによって縫う場所が短めだったので、この折り返しの部分を若干長めに改良しつつ全体の長さも変更しました。ストラップリングガードもわからない程度に形を改良してより使いやすいようにしました。型紙をコンピュータで書いておくと、この様な修正が簡単に出来ます。
– 型紙
型紙は前回の斜めがけストラップを製作した物を基本として細かいところを改良し、全体の長さも使う方の希望に合わせて変更する事にしました。型紙はデータ化しておくといつでも変更しながら作れて便利です。
– 仮組みをする
まずは変更した長さとストラップリングガードの形状などが適切かを型紙を切り抜いた状態で組み立てて確認します。プリントした型紙を実際に使用する形に組み立てます。この時に実際の金属のリングを使用してカメラに装着出来るようにします。この仮組みで使用した型紙は革の切り抜きには使用しないので、切り取り時に若干ズレても気にせずすすめましょう。基本的に長さとストラップリングガードの組み立てる向きなどさえ確認出来れば十分です。
– カメラに装着してみる
実際に使用するカメラに取り付けてみます。今回はストラップ自体が金属ボディのクラシックカメラ用なので、オリンパスの一眼レフカメラであるOM-2Nを使用しました。1970年代のカメラですが、設計から非常に洗練されていて当時では最小再形容となります。実際にカメラにストラップの仮組みを取り付けてみると幅広部分から長さまでちょうどよくこのまま作り出す事にしました。もちろんここで気になる部分などがあれば、この段階で型紙の修正をしましょう。
– 型紙をプリントする
仮組みに使用した分は革を切り取るのには使用しないので、そのまま組み立て用のサンプルとして残しておき、仮組みを再度プリントします。このプリントした分が実際の革を切るための型紙となります。
– 型紙を作る
この工程では型紙を実際の形に切り抜くのではなく、革を切りやすいように余白分を残して切り取ります。組み立てはのりテープを使用すると簡単に型紙が完成します。
– 革を用意する
革を好きに変えられるのが自作のよいところですので、前回とは違う革を使用します。ブラウンで前回のグレーのストラップとはかなり色味が違います。切り抜いたあとがあるのはこの革でハンドストラップを作ったからです。
– 革を切り取る
型紙を革に貼り付け別たち(たちナイフ)と言われる刃物で切り抜きます。縫い目の部分は目打ちや千枚通しを使用して革に印をつけておきます。ストラップリングガードは切り抜いたら横長の穴をあけてしまいました。詳しい革の切り抜き方や横長の穴のあけ方などは同様のストラップを作った時の記事を参考にして下さい。
クラシック一眼レフに似合う斜めがけストラップ製作の記事はこちらです
– 革の用意が出来ました
ストラップ本体と2つのストラップリングガードを切り抜いたら仕上げの工程の準備が完了です。この後の仕上げの工程で少しの段差などは修正出来るので、ナイフなどで切り直したりしない方がよいでしょう。
– 革を仕上げる用意をする
革の裏面(トコ)と断面(コバ)はそのままでは毛羽立ったままになるので、これを安定させるためにトコノールなどを使用して仕上げの処理をします。この工程ではトコノールを塗るためのヘラとトコノールを伸ばすためのガラス板やグラスを用意します。最近のおしゃれ系のストラップであるような切りっぱなしの革のままストラップを使用したい方はこの工程を飛ばして構いません。あと、トコノールなどの処理をすると色が濃い目になるので、その変化も含めて革を選んでおくとよいです。
– 革を仕上げる
新聞紙などをひき革の裏面(トコ)に薄くトコノールを塗り、トコノールが乾く前にガラス板などで直接革を伸ばします。この時に一方方向にガラス板を動かしますが、ストラップが長いとガラス板を動かしている間に逆側のトコノールが乾いてしまうので、トコノールが乾かない範囲内で少しずつ塗っていくとよいでしょう。断面(コバ)はスリッカー(コーンスリッカー)と言われる道具で、同様にトコノールを塗ってそれを擦るようにして仕上げます。この工程で断面(コバ)が丸まりストラップ自体の手触りもよくなります。
– ワックスはかけない
前回作った同様の斜めがけストラップでは断面(コバ)をより濃い色で防水効果も上げるために、コバワックスを使用して焼き付けしましたが、今回はより柔らかい状態で仕上げるためにコバワックスを使用しない事にしました。これは前回使用した素材と違い今回のは若干硬めの革だからのありますが、断面(コバ)をより柔らかく仕上げかつ手順を省いて短時間で完成させる事にしました。
– 接着の用意をする
折り返し部分を接着する時にリングとストラップリングガードを先に取り付けるので、この向きと入れる順番を間違えないのように一度仮組みをしてカメラに取り付けて確認しましょう。接着面がきちんと接着され縫いやすいように平坦になるよう、クランプをかけます。クランプは革の切れ端などをあて布として使用するとクランプの後がストラップにつきづらくなります。革の接着にはGクリヤーなど接着力が強すぎない接着剤がよいでしょう。
– 接着面を削る
革の接着面にはトコノールで処理がされているので、接着剤を付ける部分を目打ちや千枚通しを使用して毛羽立たせます。この時に革を折り返し重なって見えない部分だけを処理しましょう。この時に後でパーツを入れると接着剤がパーツにつく場合があるので、先にリングとストラップリングガードを入れておきましょう。
– 接着する
接着面の処理をしたら接着剤を薄く塗り半乾きの状態で革を折り返します。接着面には革の切れ端などのあて布をしてクランプをかけます。数時間で接着自体はされますが、出来れば24時間は接着剤の乾燥のために放置しましょう。
– 縫い目の穴をあける
ストラップのパーツを入れて折り返し部分を接着したら、糸を縫うための穴をあけます。革に糸を縫うための穴をあけるためには、菱目打ちと言う道具を使います。プラスチック板の上に置いた革をこの菱目打ちをプラスチックハンマーなどで叩いて穴をあけます。この縫い目の穴を真っ直ぐあけるのは慣れが必要なので、革の切れ端などで練習しましょう。
プラスチック板、菱目打ち、プラスチックハンマーを使用して穴をあけました
– 細かい穴をあける
直線は4つの穴が同時にあけられる4本目の菱目打ちが使用出来ますが、細かい部分は2本目の菱目打ちや菱ギリと言う1つずつ穴をあけられる道具を使用します。今回は菱ギリを使用して細かい部分の穴をあけました
– 糸を用意する
今回は前回試した太めと細めの間の中間の太さの糸を使用する事にしました。色も暗めなネイビーとしました。レザークラフトで1番難しいのが前の工程の真っ直ぐに穴をあけて綺麗に縫う事なので、暗めや革と同系の色の糸を使うとより縫い目が目立たず見た目がよくなります。
– 針を糸に通す
レザークラフトでは針に糸を通します。これにはレザークラフト用のやり方があり他のストラップを作った時の工程に詳しく書いてあるので参考にして下さい。
クラシックカメラ用ショルダーストラップ製作の記事はこちらです
– 糸を縫う
レザークラフトの糸は針を交互に通す事で縫っていきます。縫い目を揃えるために針を糸の上に毎回出して縫っていきます。このサイズのストラップにはこの太さの糸がちょうどよいようです。
– 完成
接着面の乾燥と縫い目の強さを確認して問題なければ完成です。この斜めがけストラップは以前作ったコンパクトカメラ用のストラップと同じ革を使用しているのでセットで使う事を想定して作りました。ハンドストラップの方は断面(コバ)にコバワックスを焼き付けているので、若干色が濃い目になっています。このハンドストラップも量産化の分になりますので、そちらの作り方も参考にして下さい。
コンパクトカメラ用のハンドストラップの量産化の記事はこちらです
– カメラに取り付ける
クラシック一眼レフカメラ用にデザインしたので、完成した斜めがけストラップをオリンパス OM-2Nに取り付けました。金属製のカメラでも問題ない幅で革の伸びもなく持ち重りがせず非常に使いやすいストラップです。ストラップリングガードが装着されているので、別のパーツを用意せずリングの傷がカメラのボディにつかないので安心して撮影が出来るストラップになりました。このストラップをもっと大きく重量のあるミノルタSR-T101やXEなどの金属製の一眼レフカメラに取り付けても全く問題なく使用出来ました。対応する重量的にもクラシックレンジファインダーカメラにも使ってもよいでしょう。
– まとめ
身長に合わせて長さを固定して調整用の金具などを省いているためストラップ自体が非常に軽量に出来ていて、カメラを含めた重量がかなり軽量化されます。断面(コバ)の処理もシンプルにすると革を柔らかいまま仕上げる事が出来ますし、この機会にお気に入りのカメラ用にレザーストラップを作ってみてはどうでしょうか。